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賢い自社株評価引下げのコツ

中小企業にとって重い負担となってのしかかってくる相続税。会社を次世代にスムーズにバトンタッチしていくには、少ない負担で自社株を後継者に移転しておくことが重要になってきます。そのためにはまず、相続財産として課税される自社株がどのように評価されるのか、そのポイントを押さておくことが必要になってきます。

自社株の評価

中小企業の事業承継、相続で問題になるのが自社株の評価です。ここではオーナーが持つ自社株の評価のポイントについてまとめました。
オーナーの持つ中小企業の自社株の相続税評価は、原則的評価方式である純資産価額方式と類似業種比準方式、それからこの二つの評価方式を加味して行う折衷方式があります。

(a) 純資産価額方式

この方式は会社の正味資産から株価を計算する方式です。考え方は会社の財産をすべて現金に換えた場合、その現金ですべての借入金を返済し、残った残金に対する税金を払った後に残る現金をベースに一株あたりの株価を計算するというものです。

計算式は次の通りです。
(会社の資産の相続税評価額−会社の負債金額−評価差額に対する法人税額等)÷発行済株式数

評価差額に対する法人税額等の計算は次の通りです。
評価差額=(会社の資産の相続税評価額−負債)−(資産の帳簿価額−負債)
評価差額に対する法人税額等=評価差額×42%(税率:財産評価基本通達186-2)

(b) 類似業種比準方式

この方式は評価する会社と事業内容が類似する事業を営んでいる公開会社の株価と比べて株価を算定する方式です。これは株価を形作る要因とされる「配当金額」「利益金額」「純資産額」の3つの要素について、「参考にする公開会社の要素の数値」に対して「評価する会社の数値」がどんな偏差があるのか、その割合を求める方法で比較します。要するに、参考にする公開会社の株価を基にそれぞれの各要素の偏差を反映させることで評価する会社の株価を割り出す仕組みになっているわけです。なお自社株は市場で売買されないため換金性に劣ることから、この点に配慮して会社の規模に応じた割合を減額することで堅めの評価をすることになっています。 計算式は次の通りです。 (各数値は概算値です。)

 

A = 類似業種の株価
B = 類似業種の1株当たりの配当金額
C = 類似業種の1株当たりの利益金額
D = 類似業種の1株当たりの純資産額
b = 評価会社の1株当たりの配当金額
c = 評価会社の1株当たりの利益金額
d = 評価会社の1株当たりの純資産額
減額割合は大会社 = 0.7
 中会社 = 0.6
 小会社 = 0.5

(c) 折衷方式

これは(a)の純資産価額方式と(b)の類似業種比準方式を併用する評価方法です。折衷割合は会社の規模によって異なります。会社の規模が大きくなれば比準価額の割合が高くなります。会社の規模は業種(小売,サービス,卸売り,その他製造業等)によって従業員数、取引高の規模、総資産の規模で大会社、中会社の大・中・小、小会社の5つに対応してます。
折衷割合は中会社の大で類似業種比準価額のほうを90%、純資産価額を10%。
中会社の中は類似業種比準価額を75%、純資産価額を25%、中会社の小は類似業種比準価額を60%、純資産価額を40%、小会社は類似業種比準価額を50%、純資産価額を50%として加味する

自社株の相続税評価は最終的には次のように算定されることになっています。
大会社は類似業種比準価額と純資産価額のどちらか低い価額
中会社と小会社は折衷価額と純資産価額のどちらか低い価額
事例に即してみていきます。 (各数値は概算値です。)

 
A社…資本金:2,000万円(額面50円,10%配当) 
業種:建設機械製造業
役員:社長53歳、専務(子供)30歳
従業員数:20名
会社規模:中会社の中
年商:8億円
資産合計:6億4,800万円
工場建物:3億円
当初借入金:3億1,700万円
(利率3%元利均等15年返済)
 
 

現在の損益計算書(法人税等は40%税率として計算)
売上高: 80,000万円
売上総利益:28,000万円
販売管理費:25,400万円
営業利益:2,600万円
支払利息:928万円
経常利益:1,672万円
特別損益:0円
税引き前利益:1,672万円
法人税等:669万円
当期利益:1,003万円

貸借対照表
資産合計:64,841万円
(時価資産合計:74,841万円)
負債合計:45,400万円
資本金:2,000万円
剰余金:17,441万円
(時価純資産:29,441万円)

この場合の株の評価額(概算値)は
1株当たりの配当金:額5円
1株当たりの利益金額:41円
1株当たりの純資産額:486円
類似業種比準方式価額:431円
純資産価額:631円
自社株評価額:481円

売上や売上総利益、販売管理費が今後20年変わらないとして借入金3億円完済後の20年後の会社の内容は次の通りになります。(各数値は概算値です。)

損益計算書
売 上 高:80,000万円
売上総利益:28,000万円
販売管理費:25,400万円
営業利益:2,600万円
支払利息:0円
経常利益: 2,600万円
特別損益:0円
税引前利益:2,600万円
法人税等:1,040万円
当期利益:1,560万円

貸借対照表
資産合計:56,616万円
(時価資産合計:71,616万円)
負債合計:15,400万円
資本金:2,000万円
剰余金:39,216万円
(時価純資産:56,216万円)

この場合の株の評価額は
1株当たりの配当金額:5円
1株当たりの利益金額:65円
1株当たりの純資産額:1,030円
類似業種比準方式価額:686円
純資産価額:1,247円
自社株評価額:826円

自社株引下げ対策

自社株の評価方法をざっと見た所で、評価のポイントが浮かび上がってきたと思います。そこで次の評価方法ごとにどのようにすれば自社株の評価額が下がるかを考えてみましょう。

(a) 類似業種比準価額の引下げ

類似業種比準価額はすでに見た通り、類似の業種の株価を基準にして配当の金額、利益の金額、純資産の金額の3つの要素を評価する会社と類似の会社で比較して算定するものです。つまり、比較する評価会社の3要素が、類似会社に比べて低ければ評価額も低くなるという計算です。したがって、評価額を下げるためには、次の3つの方法が考えられます。

1、 配当を無配とします。ないしは記念配当、特別配当とします。
2、 保険料が損金になる保険に加入するなど利益金額が少なくなるようにします。
3、 不必要在庫、機械装置、器具備品等を除却するなどして資産を少なくします。また貸し倒れにできる債権は、貸倒損失として処理することによって純資産価額を引き下げることが出来ます。さらに、これらの除却損、貸倒損失が計上されることにより、結果的に利益金額も低くなります。

(b) 純資産価額の引下げ

純資産価額はその会社の純資産の相続税評価額と帳簿価額をベースに計算します。純資産価額を引き下げる代表的な方法としては、役員への勇退退職慰労金の支払いと、借入金により建物を建築する方法があります。役員への勇退退職慰労金を支払う方法は生命保険の活用策と合わせて後で説明します。ここではまず、借入金による建物の建築で純資産価額を引き下げるメカニズムを説明します。

法人が建物を取得した場合、課税時期(相続開始日、贈与日)前3年以内に取得したものに関しては純資産価額の計算上、取得価額のままで相続税評価されます。しかし、それ以前に取得していた建物は、時価の6〜7割程度の固定資産税評価額をベースに相続税評価される結果、借入金の評価額の方が大きくなり、純資産価額が圧縮されるわけです。また、この建物を賃貸にまわせば建物が貸家扱いとなるため、評価額はさらに引き下げられます。貸家となると他人の権利がつくため、3割減額されるからです。

その他の方法には、類似業種比準価額のところでも触れたように不必要な在庫、機械装置、器具備品等を除却するなどして資産そのもの減らしたり、貸倒れにできる債権を貸倒損失として処理することによって純資産価額を引き下げることができます。さらに高収益部門を会社から会社分割によって切り離すことも純資産価額引下げの観点から見ると検討の余地が十分にあります。ただし、会社分割後のキャッシュフロー等の予測をしっかり行わなければ危険です。

(c)売買価格を決める前に

なお、自社株を売買する場合の税務上の適正な売買価格は、基本的に相続税の株評価に準じて決められるものですが、自社株を売った株主が同族株主、あるいは中心的な同族株主かどうかに左右されます。ポイントは次の通りです。

(a)自社株を会社に売った人が同族株主に該当するかどうかは、その人が自社株を売る直前の自社株保有数によって判定する。同族株主と判定されれば、原則として会社の正味資産から株価を割り出す純資産価額方式で求めた株価に、上場会社などの株価を参考に計算する類似業種比準方式で求めた株価を加味して算定した株価を適正な売買価格とすることになる。

同族株主とは株主のうち、株主の一人とその同族関係にある個人・法人が持つ自社株の合計保有数が発行済株式数の30%以上の場合の当該株主と同族関係者のこと。

自社株を会社に売った人が「中心的な同族株主」に該当する場合には、会社が「小会社」に当たるものとして、会社の正味資産から株価を割り出す純資産価額方式で求めた株価か、純資産価額方式と類似業種比準方式で求めた株価を足して2で割って求めた株価のどちらか低い方を適正な売買価格とする。

中心的な同族株主とは、同族株主とその配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族の保有している自社株の合計が発行済み株式数の25%以上の場合の当該株主のこと。

(b) 自社株の発行会社が土地や上場株を持っている場合、1株当たりの会社の正味資産を計算する際には、土地や上場株は株を売った時点の時価で評価する。1株当たりの会社の正味資産から株価を求める場合には、評価差額に対する法人税額等は控除しない。会社の正味資産から株価を求める考え方は本来、会社の資産を全部売り払って、負債を始末し、残った財産にかかる法人税等を負担した後の「余り」から株価を求めるというもの。しかし税務当局は、株が取引されるのは、会社が存続することを前提にした価格との考え方から法人税等相当額は計算上引かないのが適当と考えている模様。

金庫株については、株式価格をはじめリスクもあるので、是非とも税理士等の専門家に相談してから活用するように心がけた方がいいでしょう。

中小企業の現実

結局、中小企業のオーナーの相続の現実は、売ることのできない自己株式、自宅等が財産のほとんどで、そこに納税や、財産分けのもめごとが発生します。

資金が多額に必要なのです。その資金確保として、生命保険を利用するしかありません。非課税規定も十分利用できます。

そして、現実的に解決できる専門家とトップの大きな決断が重要となります。