『「最後の仕事」その2』ヒューマンネットワーク・メールマガジン(通号284号)

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2018/4/11号 ━━━━

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 『相続の6つの物語』本郷 尚 著 
 日本経済新聞出版社刊(全国書店で販売中)より転載しています。
 https://www.amazon.jp/dp/B01KA008TC/

 ※弊社提携先、株式会社タクトコンサルティング会長で税理士の
 本郷 尚先生のご厚意により、著作を掲載いたします。
 長い物語ですので、数回に分けてお届けします。
 保存しながらお読みくださいますと幸いです。


 「最後の仕事」その2

 社長を引き継いで10年、
 賃貸経営も軌道に乗り、ひと息ついたとき、
 琴音は病に倒れた。
 
 仕事中、琴音は息苦しさと
 胸を締めつけられるような痛みに襲われ、
 思わずうずくまった。
 驚いて駆け寄る社員に「大丈夫よ」と言いかけて意識が薄れた。
 
 気がつくと白い天井が見えた。
 酸素マスクやら点滴の管やらでベッドに繋がれていた。
 「意識が戻ったみたいだ」という声が聞こえる。
 
 「お母さん、大丈夫ですか」
 息子や嫁たちの顔が覗き込んだ。
 「まるで臨終の場面みたいだわ」と思ったが、
 息苦しさも消えていて、このまま死んでしまう感じはしない。
 
 心筋梗塞だった。
 すぐに社員が救急車を呼んでくれたので、ことなきを得たが、
 いろいろ検査するとその他にも悪いところが見つかり、
 3ヵ月の入院を余儀なくされた。
 
 まわりから「この際、ゆっくり休んでください」と言われたが、
 お産以外、入院したことがないほど健康だった琴音にとって、
 ただ寝ているのは苦行だった。
 
 息子や嫁たちが代わる代わる見舞いに来た。
 しかし、琴音は「完全看護だから顔を出す必要はないよ」
 と見舞いを断り、個室に移ると仕事を始めた。
 
 医者にも看護師にも叱られたが、
 注意の目を盗んでは社員と連絡をとり、
 関連書類一式も持って来させた。
 
 不動産賃貸業は外から見るほど気楽な仕事ではない。
 入居しているテナントからのクレームや
 設備等のトラブルは日常茶飯事だ。
 
 どちらに非があるにしろ、
 とにかく迅速に対処しなければ事はこじれる。
 本来なら社長がすぐに駆けつけて頭を下げてこそ、
 丸く納まるのだ。
 
 ビル市場は一部の最新鋭大規模ビルを除けば、
 平均空室率15%以上の借り手市場であり、
 競争は厳しい。
 
 テナントから退去予告が出れば、
 ビルの仲介会社と綿密に打ち合わせをし、
 相場に合った次の募集条件を決めなければならない。
 昨今の新規入居テナントは、
 足元を見て何ヵ月かのフリーレント(無料貸し)さえ要求してくる。
 
 経験豊富な社員はいるが、
 金銭が絡む判断は琴音しかできない。
 こんなところでのんびり寝てはいられないのだ。
 
 医者からは「これまでと同じように仕事を続けるなら、
 命を縮めることになりますよ」と釘を刺された
 琴音自身も、以前のように無理がきかない身体であることはわかっていた。
 もう70歳を過ぎている。
 そろそろ息子たちに会社を譲るべきだと思う。
 しかし、適任者がいない。
 
 長男の和夫が何度か、
 大学を辞めて会社を継ぐことをほめかしていたが、
 琴音はとぼけて答えなかった。
 
 和夫は社長の器ではない。
 人情の機微がわからないし、コミュニケーションも苦手だ。
 人に頭を下げることもできない。
 
 その点、三男の武は人当たりもよく、
 リーダーシップも備えているが、
 現在の研究職が気に入っていて家業にはまったく興味を示さない。
 外科医の次男も会社を継ぐ気はない。
 
 
 考えあぐねていたとき、幼馴染の美也子が見舞いにやってきた。
 琴音が夫を亡くして途方にくれていたとき、
 ずっと傍らにいて支えてくれた友であり、
 唯一、本音を語れる相手だ。
 
 「琴ちゃん、びっくりしたわよ。もう、大丈夫なの」
 胸に抱えた花束を解いて花瓶に放り込みながら、
 一方的にしゃべり続ける。
 
 「あら、なに、この書類の山。花瓶を置くところもないじゃない。
 いゃあねえ、仕事をしているの。
 そんなことをしていたら治るものも治らないわよ。
 心筋梗塞って病気はねえ・・・」
 
 そんな美也子に苦笑して、琴音は言った。
 「ねえ、美也ちゃん、ちょっと私の話も聞いてよ」
 ちょうど後継者のことを誰かに聞いてもらいたいと思っていた。
 美也子なら適任だ。
 
 琴音は、長男の和夫が大学を辞めて会社を継ぐ気になっていること、
 しかし、社長の器でないことなど
 小一時間かけて洗いざらし打ち明けた。
 
 「和夫ちゃんは小さい頃から優秀だったけど、
 確かにちょっと人当たりは悪いわねえ」
 首を傾げながら続けた。
 
 でも、大学の先生もやってきたんだし、長男だし、
 本人もその気になっているんだもの。」
 和夫ちゃんに任せてみたら?
 心配なら、琴ちゃんの下で経験を積ませてから、
 社長にすればいいじゃない」
 
 真面目に修業を積む気があるくらいなら、私も悩まないわよ。
 和夫はね。すぐに社長になる気なの。
 恥ずかしいけれど目的はお金だと思う。
 それに不動産賃貸業なんて簡単なもんだと舐めているのよ。
 会社に来ても、ろくに社員たちに挨拶もしないんだから」
 
 「あらあら」
 
 「いい歳をして世間知らずなのよ。育て方を間違えたわ」
 
 兄弟の中で、和夫だけが何度も役員報酬の増額を要求してきた。
 「長男だから」という意識が強いのだ。
 「母親が聞いてくれないのなら、自分自身が社長になればいい」
 と思っているのかもしれない。
 
 「琴ちゃんの心配はわかるけど、一番大事なのは自分自身の身体よ。
 今回の病気で身体が悲鳴をあげていること、わかったでしょ。
 あれこれ悩んでストレスを溜めたら心臓に悪いわ。
 和夫ちゃんにチャンスをあげてみたら」

                    続く


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 著者 本郷 尚(ほんごう たかし)氏
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 税理士。株式会社タクトコンサルティング会長。
 不動産活用、相続、贈与、譲渡など資産税に特化した
 コンサルティングを展開。
 また、著書やセミナー等のあらゆる機会を通じて、
 相続対策の新しい考え方の普及にも力を入れている。

 昭和48年税理士登録。
 昭和50年本郷会計事務所開業。
 昭和58年株式会社タクトコンサルティング設立。
 平成15年税理士法人タクトコンサルティング設立。
 平成24年株式会社タクトコンサルティング会長に就任。

 「こころの相続 幸せをつかむ45話」、
 「改訂新版 がんばれ大家さん!」、
 「不動産M&A入門」他、著書多数。

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    株式会社東京会計パートナーズ
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