納税猶予中の会社を売却したい CASE 09

会社が黒字のうちに売却したい

「御社をM&Aで買い取りたい」。武富社長(仮名38歳)にその話が舞い込んだのは、事業承継税制で父親から株を譲り受け、二代目社長となって間もなくのことだった。会社はカーディーラーとして県内に3店舗をもち、そこそこ収益をあげていた。
車好きで、アウトドア派、若いころからあちこちドライブしていた父親とは対照的に、武富社長はもの静かでひかえめな性格。家で本を読むのが唯一の趣味だった。

体調を崩し、有料老人ホームに入所することになった父親に懇願されて、社長職を引き継ぐことに同意したものの、車にはほとんど興味がない。「会社を大きくしたい」という野心もなかった。
会社の株価はかなり高額になっていたが、事業承継税制を使ったおかげで、お金を使わず100%保有することができた。
しかし武富社長は、前途を考えるとあまり明るい気持ちになることができなかった。
地方ディーラーの将来がどのようなものになるのか、見通しが立たなかったのだ。

電気自動車・自動運転・空飛ぶ自動車…。いろいろ美しい未来は語られているものの、一方で若い人たちがマイカーから遠ざかっている現実がある。ディーラーとしてなにか手を打たなければ生き残れないことはわかっているのだが、どうしたらいいのか具体策を思いつかなかった。いつまで黒字でいられるのか…。

そんなおり、大きな資本をもっているディーラーからM&Aの話をもちかけられた。
父親にはすまないと思うのだが、会社の将来や従業員のことを考えると、自分がトップに立つよりずっと安泰だ。
それにM&Aである程度、お金が手元に残れば、妻とふたり、のんびり暮らせるかもしれない。

問題は、会社を売却した場合、猶予してもらった税金はどうなるのか?
納めなければいけないとしたら、いくらになるのか。専門家にたずねなければ、はっきりした答えがわからない。
そこで武富社長は、父親が事業承継税制を使うとき、親身になって相談に乗ってくれたコンサルタントに話を聞きに行くことにした。

猶納税猶予中の会社を売却したい

相続時精算課税を選択していた

コンサルタントの話では、M& Aで会社を売却するなど「後継者が事業を途中でやめてしまった」場合、事業承継税制の納税猶予を受けることができなくなるため、贈与税と利子税を納める必要が生じるそうだ。問題はその金額の大きさだが・・・。

「お父さまは事業承継税制を使うとき、相続時精算課税を選ばれています。この場合、贈与税額は株価の20%で済みます。M&Aで会社を売却されたとして、十分お金が手元に残ると思いますよ」
事業承継税制では贈与税の計算方法として、これまでは暦年贈与しか選べなかった。
それが平成29年の改訂で、相続時精算課税を選ぶことができるようになったとのこと。暦年贈与だと贈与税は株価の55%、それに対して相続時精算課税は株価の20%。ずっと低く抑えることができる。

具体的な数字を示して、コンサルタントが説明してくれた。父から受け継いだ株は2億円相当である。
事業承継税制を使うことで納税猶予されていたが、それが打ち切られると贈与税が発生する。もし暦年課税で計算すると、贈与税額は約1億300万円になる。ところが相続時精算課税の場合、納税額は株価の20%、つまり3500万円である。

相続時精算課税は、その名称通り、父が亡くなって相続が生じた際、贈与税額との差額を清算しなければいけない。でも相続税の税率はずっと低いため差額は1360万円。合計4860万円である。


猶予打ち切りを視野に入れて準備

現在、会社の株価は高く、M&Aの売却額、つまり武富社長の手に入る金額はかなり高くなるだろう。
父が武富社長に株を譲る際、コンサルタントのアドバイスに従って、退職金額を上積みするなどの手法で株価を抑えてくれたのが功を奏したのだ。

相続時精算課税制度を選んでいたこと、贈与時に株価を低く抑えてくれたこと。父の賢明さに、いまさらながら頭の下がる思いだった。あとは会社を手放すことを父が納得してくれるかどうかが気がかりだった。
武富社長は父親が入所している施設を訪ねて、会社を売却するつもりであることを伝えた。
父は一瞬とまどった表情を浮かべたが、次のように言葉をつないだ。

「おまえが自動車を好きでないことはわかっていた。無理じいをして悪かったな。M&Aで従業員たちの待遇が悪くならないなら、私はそれでかまわないよ。おまえたち夫婦が幸せになる道を選びなさい。…いや待てよ、その資金で新しい会社を立ち上げるのもおもしろいぞ!実はいま、おまえが好きな本の分野で大きなビジネスのチャンスが生まれていてな…」
目を輝かせながら話す父親の顔を見ながら「積極的な性格は、変わらないな」と、武富社長は胸をなでおろしていた。

猶納税猶予中の会社を売却したい

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