2020年03月25日 ※税法上の取扱いについては、左の日付時の税制によるものです。
後継者がいないという悩みを抱えたオーナー経営者も少なくありません。
その場合の事業承継手段として、
M&Aを提案するコンサルティング会社が増えています。
親族外に会社を継いでもらう手段として注目が集まっているのです。
しかし、M&Aは大変難しく、多くの落とし穴が潜んでいます。
オーナー経営者にしてみれば従業員の雇用を守るためにM&Aを決断したつもりでも、
従業員の反対でうまくいかないケースも少なくありません。
東京で印刷会社を営むA社もそんな典型例でした。
社長は自分の余命が短いことを知り、会社の行く先を案じていました。
後継者もいないことから、M&Aで会社を売却することを決め、
さっそく準備に取り掛かったのです。
しかし、契約まであと一歩というところで社長は他界してしまいました。
保有していた株式は奥様が相続することになり、そのまま社長に就任しました。
葬儀を終えたところで、当初の通りM&Aを実施することが決まりました。
しかし、無事にM&Aを実行できるというときに、
突然社員が奥様に泣きついてきたのです。
「僕たちを売り飛ばすようなことはやめてください。
これまで懸命に働いてきたし、これからも一生懸命やらせてもらいますから」
奥様は、自分がまるで悪いことをしているような感覚になり迷いました。
先代の社長は、こうなることを危惧して、
自分の目が黒いうちにM&Aを行おうとしていたのです。
奥様は「たしかにバカなこととはわかっているけれど、社員の涙は無駄にできない」
とM&Aを取りやめてしまいました。
そうして数年が経過。A社は今も存続しています。
それならよいではないか、と思われるかもしれませんが、
奥様つまり現社長は「あのとき売却していればよかった」と深く後悔しています。
いきなり社長に就任し、経営のことなど何もわからないのです。
社員から設備投資を提案されても、それが必要かどうか、
判断ができずに社員に言われるままになってしまっています。
結局、資金面の責任を負うだけの立場になってしまいました。
この先、本当に社長のリーダーシップが問われるような局面を迎えたとき、
A社はどうなってしまうでしょう。うすら寒くなります。
このケースだと、奥様に信頼できる相談相手がおり、
M&Aを断行するか、
別の経営体制を提案してもらえれば結果は変わっていたかもしれません。
本当に社員のことを大切に思うのであれば、
しっかりと会社を任せられる売却相手を見つけ、
M&Aを行うことも必要ではないでしょうか。
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